開発実績

【事例2】 
鍛造技術への挑戦 (2004年5月〜)
〜 増肉加工技術の開発 〜

未知の分野へのチャレンジ。

開発事例02 増肉加工【事例1】で紹介した、ファインブランキング技術への挑戦と時を同じくして、増肉加工技術開発にも私たちは取り組んでいた。 増肉加工どころか、鍛造加工自体も手がけたことのない私たちに、本当にできるのかという不安な気持ちでのスタート。 この製品は、中心穴の周りの部分に増肉によるお山がある製品。この製品に対する課題は山積みだ。 図面寸法通りに増肉加工を完成させること、増肉のお山の裏面にある掘り込み形状の円筒部の径と直角度を確保すること、外周側の段差形状の深さを図面通り成形し、製品全体の反りも解消すること。さらには試作中の度重なる金型破損。過酷な成形ゆえだ。この金型を量産で破損させないための型構造の開発も大きな課題だった。

新工法開発の必要性。

試作初期は、いかに増肉加工を行うか、その方策の模索からスタート。
一緒に開発を進めていた東伸では、ファインブランキングの量産を行っていたため、その技術を使って初期の増肉開発を進めた。
初期の工法は次のようなもの。中心部の増肉部分にバーリング加工の様な方法で材料を立ち上げ、リストライク工程で立ち上げたフランジを潰すようなイメージで増肉加工を施す。
この工法を使えば、増肉部分は図面形状に非常に近い形状で加工することができた。
しかし、断面の顕微鏡検査の結果、材料繊維に不連続な部分が見られ、このままでは強度保証できず量産工法としては成立しない。
フランジ状に立ち上げた部分を潰す際に、繊維が切れないよう、巻き込まないように制御しながら試作は、うまくいかない。私たちの既存工法では量産までこぎつけるのは難しいため、新しい工法を開発する必要があった。

師匠の教えに従って。

すくまない型づくり 東伸の技術者と共にアイダエンジニアリングに相談に行き、正しい増肉加工のやり方を鍛造加工のプロの方から教わる。それをベースに、一般プレスで増肉加工が可能になるよう型構造の作り込みが始まった。
この工法で成形を行うためには、製品を平面方向で強く押さえる必要がある。そのためにはスプリングやガススプリングでは力不足になるため、油圧発生装置が必要だ。
そこで、当時購入を決めていた UL プレスの仕様について再検討を行い、油圧装置を使える仕様にすることに決定。油圧装置を使うとなると、試作を行うにも東伸の設備では対応できない。
そこで、アイダエンジニアリングのプレス機械を借用し、試作を行うことになったのだ。
試作の初期段階では、製品中心部の増肉だけではなく、その他の部分まで増肉してしまい、どうやって必要部分のみ増肉させるか、板押さえ圧を調整したり、金型寸法や構造を調整したりの、手探り状態だったが、何とか形になる型構造と工法にたどり着くことができた。
しかし、過酷な成形を行っている関係で、金型が直ぐに割れてしまう。そのためには弱い部分を強くするか、型の材質を変更し割れにくくする。当時の私たちには、この程度しか対策案が浮かばなかった。しかし、実際の型に組み込むにはスペースも限られているため、そう簡単に型の形状を変えることも難しい。
ここでも助けてくださったのが、アイダエンジニアリングの師匠。目から鱗の対策案を教えてくださった。この案に従って金型の強度計算と設計を行い、ようやく図面寸法を満足できて壊れない型の形を作ることができた。
これで増肉加工自体の問題はクリアしたものの、その他の部分の寸法を図面通りに作るにはまだほど遠い状況だった。

すくまない型づくり 。

まず、増肉部分の裏面の掘り込み形状の作り込み。
径も直角度も図面通りにできない。うまく両方をバランスさせるために、金型寸法を百分の 1 ミリ単位で調整し、パンチの角 R を 0.1 ミリ単位で調整する試作の繰り返し。
これまで経験したことがなかったが、 HRC60 以上で焼きが入っている型が成形時の荷重によりすくんでいる。計算してみると、いくら焼きが入った硬い型であってもすくむことが判明。
これまでこの様な過酷な成形を行った事が無かったので、金型がすくむという考えは全く持っていなかった。材料力学の基本中の基本であるものの、今までは意識する必要もなかったもの。この経験がその後の製品の加工技術開発にもつながり、非常によい勉強の機会となった。
すくみ量を見込んで型寸法を再設計したり、強度計算を行って成形荷重で割れない強い型を作ることで、やっと満足のいく形状の成形が可能に。
しかし、次なる問題が製品外周側の段差の成形だ。中心部分を増肉加工することで、製品全体には歪みが生じ、その歪みの影響により、製品が反ってしまう。これを解消するための試行錯誤が始まった。

量産に向けて。

段差成形の調整を行うと増肉部分とその裏面の寸法にも影響が出るため、総合的に寸法変化を見ながら、型の形状や寸法を調整しながらの作業。試作開始から 1 年半の月日をかけて開発が完了した。
金型構造が決まり、量産用の金型も完成し、アイダエンジニアリングの工場に金型を持ち込んで量産試作を実施へ。
するとここで、また別の問題が発生。
一つは糸バリ。糸状のバリを発生させないためには、パンチ径を調整しなければならない。
各工程適切なパンチ径と製品径にするために、再度百分の 1 ミリ単位でのパンチサイズ調整。
2 週間の試運転期間の中で、特急でパンチの追加工や新規制作を行い、何とか試運転期間中に良品を加工することができた。
もう一つの問題は、各工程のハイト合わせ。
量産型の全行程同時加工では、各工程の微妙な高さの差が製品精度に影響してしまう。
百分の 1 ミリ単位で各工程の高さを揃えるための調整を行うことで、全行程同時に加工を行っても良品が加工できる金型が完成した。
現在、月産 6 万台を量産。
全く未知の世界の鍛造加工を一般プレスで行う。
私たちにとっては全てが挑戦であったが、ここで培った技術と塑性加工の基礎の理論を習得できたことにより、他の製品の加工にも同様の手法で取り組むための基礎作りの機会ともなった開発であった。

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